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9年ぶりの坂本真綾×菅野よう子×岩里祐穂トリオの新譜...それほど間が開いていたのだろうかと思うほどの、あまりの自然さに軽く驚く。「tune the rainbow」以来なのだろうか...どちらにしても同じく映画主題歌でありながら、美しさのベクトルが全く異なる今回の楽曲展開は、ある意味でとても感動的だ。リリース以前にタイトルの字面だけで勝手に想像していたキャッチャーなものとは180度異なる、重厚でありながら儚げで決して聴く耳に媚びず、されど独自の世界を繰り広げるプラチナティックな淡々とした曲調が秀逸。さらに視界が一気に広がるように、印象的なフレーズとともに雪崩下る、胸を射る切ないサビに完全にやられた、と思った。「自由」という言葉の持つ意味を、胸が締め付けられるような歌声で逆説的に問いかけられ、広がるからっぽの空を独り立ち尽くし、見つめる主人公の姿がまさに目に見えるかのよう...その映画的な曲の拡がりに言葉まで失くしてしまう。劇場アニメシリーズ『コードギアス亡国のアキト』主題歌。それが意図したものであるのかないのか、自身が演じるヒロイン・レイラのクールでどこか空虚な印象と本作「モアザンワーズ」のイメージがぴったり重なる。自由のない壊れた世界で夢を見る――と、映画のキャッチフレーズは謳っているが、それを逆手に取った独特のテーマ性に唸らさられる。（因みにwikiによるとサビのフレーズは真綾岩里の間で何年か前から温存されていたものだそう）多くを語らずとも全てが君の中（ここ）に生きている、という歌のテーマは奇しくも坂本真綾本人作詞のc/w「デコボコマーチ（隊列は君に続く）」でも同様に語られる。「モアザンワーズ」の硬質さとは全く異なる無邪気さとユニークさで、けれどしっかりと成長した彼女が歌う力強さのようなものが、コーラス隊に応援されながら、どこか一瞬ファンキーさまでも感じさせるラストのアカペラ風歌唱にて色鮮やかに立ちあらわれる。ボーナストラック「木登りと赤いスカート」は既に懐かしいアルバム『LUCY』からの菅野楽曲ライブ音源。10数年が経過して、実にその歌声に独特のツヤのようなものが加味されたと感じる、彼女らしくありながら遜色のないヴォーカルに安心させられる。一時菅野楽曲から離れ、そして確実に歌い手として成長したその成果のようなものが、時を経て再びこうして以前と同様に完璧に整えられた古巣に舞い戻ることで、如実にビビッドに感じられる――おそらくは、そうでなければ今の彼女はなかった、と言い切れるほどの、ある意味で円熟した完成度の高さに完敗なのである。